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東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)119号 判決

原告 松田千秋

被告 特許庁長官

主文

昭和三十二年抗告審判第一、〇七七号事件について、特許庁が昭和三十六年七月三十一日にした審決を取り消す。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一請求の趣旨

原告は、主文同旨の判決を求めると申し立てた。

第二請求の原因

原告は、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告は、その発明にかゝる「多重式図表器」について、昭和三十年四月六日特許を出願したところ(昭和三十年特許願第九、九五三号事件)、昭和三十二年五月二十四日拒絶査定を受けたので、同年六月五日これに対し抗告審判を請求したが(昭和三十二年抗告審判第一、〇七七号事件)、特許庁は昭和三十六年七月三十一日原告の抗告審判の請求は成り立たないとの審決をなし、その謄本は、同年八月九日原告に送達された。

二、原告の出願にかゝる本件発明の要旨は、その明細書なかんずく特許請求の範囲の項に記載されているように、

(1)  単一の案内溝に多数の弾性条板を単純に重複挿入してあること。

(2)  任意の弾性条板のみを、他の条板に干渉することなく、任意に移動昇降し得る装置を有すること。

であつて、この外明細書には、弾性条板を着色し、また条板案内溝に覗窓を設けること等を記載してあるが、これらのことは、説明のため附記したものであつて、本発明の要点ではない。

なお右のうち(2)については、多様の方式が含まれ(たとえば昭和三十二年特許出願公告第四四三三号、昭和三十四年実用新案登録出願公告第五一二五号)、これだけで一個の独立した発明考案となり得るので、本発明において(2)は、要旨というよりむしろ(1)の補足事項とみるのが至当であり、この見地から明細書には、詳細な説明を省略してある。従つて本件発明の特許請求の範囲が、前記昭和三二年特許出願公告第四四三三号等の特許又は登録を制肘するおそれがあるならば、本件特許出願の特許請求の範囲を「覗窓を有する単一の案内溝内に、他の条板に干渉することなく任意に移動昇降し得る有色弾性条板数条を重複挿入してなる多重式図表器」と訂正する用意がある。

三、審決は、昭和二十九年特許出願公告第五四七〇号明細書(以下引用例または引用公報という。)を引用し、これと本件発明の要旨とを比較し、

(1)  弾性条板を二条より更に増加することには、特に発明的工夫を要しない。

(2)  弾性条板を着色することは、従来周知のことである。

(3)  任意の条板を他の条板に干渉することなく移動昇降できる点において、差異のあるものとは認められない。

としている。

四、しかしながら審決は、次の理由により違法であつて、取り消されるべきものである。すなわち審決は、引用例においても、「二条の弾性条板は、ともに単一の案内溝に挿入されている」ものとみている。しかるに引用公報を詳細に検討すれば、これに示すものは、「二本の条板6、7を、それぞれ左右に喰い違つた案内溝4′、4″に挿入する」ものであることは、その「発明の詳細なる説明」及び「特許請求の範囲」並びに図面の記載により明白である。(そしてこのことは引用例と同時に出願され、かつこれと組み合せて一個の複式図表器を構成する他の発明である昭和三十年特許出願公告第五五二七号の特許請求の範囲において一層明瞭に記載されている。)

してみれば、(各条板が別々の案内溝に挿入されている)引用例記載のものが、「単一の案内溝に多数条板を重複挿入した」本件発明とはその構想を全然別にしたもので、この異なる構想の上に立つ引用例について「弾性板を二条より更に増加することには、特に発明的工夫を要しない」とすることは、重大なる誤りといわなければならない。

元来、本件発明のように「単一の案内溝に多数条板を単純に重複挿入する」ことが、「各一本の条板を挿入した案内溝多数を階段的に重畳する」よりも有利であることは何人も肯定するところであるが、その具体的構想において至難の点があることは、引用例の発明者である原告が、その出願後約三ケ年日夜研究に没頭した結果漸く本発明を完成した事実からみて、明らかであり、決して審決のいうように、本発明が引用例の記載事項から容易に実施し得るが如きものではない。

本発明の性能効果については、昭和三十一年七月二十三日の訂正願書に記載したところであるが、いまこれを具体的に例示すると、本発明においては、一条板の厚さを〇・一ないし〇・二五ミリメートル、条板重複数を六重としても案内溝の全深は二ミリメートルで十分であるのに反し、引用例によれば、各案内溝の厚さを二ミリメートル、案内溝重畳数を六重とすれば、案内溝部の全厚は約一二ミリメートルとなり、このような深い案内溝では、下層条板先端の目盛合致が不正確となり、かつ甚だしく視覚感を害するのみならず、案内溝部の構造が著しく複雑となる(従つて製造費が高くなる)等、本件発明のものと比して性能効果が著しく低下する。

第三被告の答弁

被告指定代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告主張の請求原因に対し、次のように述べた。

一、原告主張の請求原因一及び三の事実はこれを認める。

二、同二を否認する。

原告の出願にかかる発明の要旨は、原告の主張する(1)及び(2)ばかりでなく、(3)弾性条板を着色したこと及び(4)条板案内溝に覗窓を設けたことが、その発明の必須要件をなすもので、このことは、明細書における「特許請求の範囲」及び「発明の詳細なる説明」の項の記載に徴し明白である。いわんや原告の「(1)に本願の特に重要な要旨があり(2)は(1)の補足事項とみるべきである」との主張にいたつては、本件発明を故意に自己に有利に解釈しようとするもので、本件発明の実質的内容を無視したものといわなければならない。本件発明の内容についてみるに、(1)の要件は、(2)の要件によつてはじめてそれ相当の効果を有するものである。なんとなれば一つの案内溝に多数の条板を重複して挿入すれば、その各条が独立的に上下されるためには、各条が互に干渉してはいけないので、(2)と不可分の関係において(1)が存在する。

本件特許出願訂正は、もはや審判継続中ではないから認められないことはいうまでもない。

三、同四の主張をも否認する。

審決は、引用例に記載されたものは、「二枚重ねた棒状グラフ表示用弾性条板を、それぞれの案内溝により、適当な間隔を以て、図表器表面のグラフ用紙罫線部上とさらに図表器裏面にまたがつて平行状に直立するようにし、前記弾性条板が図表器の下部屈折するところに、各組の弾性条板をさしはさんで長いローラー(22)(23)を設け、その二本の長ローラーの中間に一個の短ローララー(21)を設け、上層の弾性条板を外側即ち下方の長ローラー(23)に、また下層の弾性条板を内側即ち上方の長ローラー(22)に任意圧着できるようにし、長ローラーに短ローラーが圧着したときだけ、グラフ表示用の弾性条板が駆動されて棒状グラフ表示を変更調節するようにした図示器が示されている。」と認定し、この内容は本件発明が引用例と同じ性質の図表器であることを示すとともに、原告のいう(2)の本件発明の要旨を包含することを明瞭に示したものである。原告が特に指摘している審決理由(1)の「本件発明ではグラフ表示のための弾性条板が単一の案内溝に多数条挿入されているのに対し、引用例のものは二条である」点については、先に述べた本件発明の要旨を総合的に判断した上でその是非を論ずべきであつて、その総合判断の上に立つて両者の差違を審理した結果、その差異を審決理由の(1)、(2)として指摘したものである。

引用公報記載のものは、原告のいうように、弾性条板が単一の案内溝に挿入されていないことは被告も認める。しかしながらこの一事をもつて、本件発明の特許性の判断の結果を左右するものではない。すなわち被告は審決が上記の点において不備のあることは認めるが、その要件が本件発明において占める技術的な意味からみて、審決の結果を左右する程重大なものと認めることはできない。この点については、本件発明の要旨を如何に見るかということと関連して判断すべきであり、原告の指摘の点は、本件発明の要旨において、その要旨の一部をなすものであるから、この一点の相違は、本件発明と引用例とを総合的に技術的に比較して判断されるべきものである。そして上記の点が明細書からみて重要な要旨であるといつても、発明成立の上で重要であるかどうかは別個の問題である。明細書には強調されている要件であつても、先行技術と対比してみるとき、その要件はとるに足りないものであることがあるからである。

そこで審決理由(1)に示す点を技術的に検討するのに、引例のものは二枚の弾性条板が、その立ち上りのところで案内溝(4′)(4″)を通じて上昇するようになつているが、その案内溝は単に統計図表の下部のみであつて、その案内溝を出た大部分の図表表示部では、二条の弾性条板は互いに重なりあつている。弾性条板は、弾性のあるものであり、セルロイド等であることは明細書に示されているので、それらを送るとき本件発明並びに引例に示すように、各条をそれぞれローラーで挟んで押し上げれば、条板表面は摩擦が少い上に弾性があるからお互に他を同時に引き上げ又は引き下げることはない。

従つて引用例のものにおける案内溝を単一のものとしても、お互に干渉することがないことは明らかである。本件発明はこのことに着目して多数の弾性条板を一つの溝におさめたものに相当する。

原告は本件発明に到達するのに苦心を払つたことを述べているが、両者の相違は、これを技術的にみれば、発明力を俟つてはじめて実施できるものとは認められない。そして一つの溝に多数条の条板を重複挿入したものは、現にこの出願前公然知られており(たとえば昭和二十九年実用新案登録出願公告第一六五三一号)、この点からみても上記の見解は独断的でないことが認められる。これを要するに、引用例のものが単一の案内溝に多数の弾性条板を挿入したものでないとしても、これと本件出願発明とを比較したとき、両者の相違は特に発明力を要するものでないことの、審決と同一の結論に到達するものである。

そもそも従来弾性条板を案内溝に挿入する場合、その案内溝の下部の条板挿入個所のところで、各条板を隔離する隔壁を設けているのが一般である。そしてその隔壁のために条板の数を増せば、その厚みを増し、図表器は全体としてその容積が大きくなることは、その構造をみれば、敢えて当業者ならずとも容易に想像される。そして本件発明の主要な要件である(1)は、前記の隔壁を除いたものに相当する。ところで右(1)の要件は、各条板が互に干渉することのない他の装置の発明の当然の結果として現われたものである。従つて本件発明の主体は、他の装置にあるというべく、その効果は(1)のみの結果ではない。そして(2)の要件は、実質的には公知のもので、本件発明の効果をそれによつて確保し得るものとなし得ない。

以上の前提に立つてみるとき、いわゆる隔壁を除いて、条板を単純に案内溝に重複挿入するということに果して発明力を要するだろうか。前述の隔壁のあることの不都合は、容易に何人も判るであらうし、また隔壁を設けないときは、従来の条板送りの機構をもつてしては、条板の干渉のおこることが判つていたから、隔壁が設けられていたものである。すなわち隔壁を除くことそれ自体は、すでに考えられていたことといつてよく、(1)の要件は、その着想として、特に発明力を要しないものである。

第四証拠〈省略〉

理由

一、原告主張の請求原因一及び三の事実は、当事者間に争いがない。

二、その成立に争いのない甲第一号証によれば、原告が特許願に添付した明細書中「特許請求の範囲」の項には、「表示すべき棒図の幅及び最大長に相当する覗窓を有する単一の案内溝内に、重複挿入した数条の有色弾性条板と、任意の有色弾性条板を、他の条板に干渉することなく、任意に移動昇降し得る装置とよりなる多重式図表器」と記載されており、これと右明細書中「発明の詳細なる説明」及び「図面」の記載並びにその成立に争いのない甲第四号証(昭和三十一年七月二十三日付訂正書)の記載とを総合すれば、原告の本件出願にかかる発明は、

(1)  単一の案内溝内に、多数の弾性条板を、その間に隔壁を設けることなく、重複挿入してあること

(2)  任意の弾性条板のみを、他の条板に干渉することなく任意に移動昇降し得る装置を有すること

(3)  弾性条板を着色したこと

(4)  条板安内溝に覗窓を設けたこと

を要件とする多重式図表器であると認定せられる。

原告は右要件中(3)、(4)は発明の要点ではなく、(2)は(1)の補足事項とみるのが至当であると主張するが、旧特許法施行規則(大正十年農商務省令第三十三号)第三十八条の規定よりこれをみても、右原告の主張は採用することができず、また「特許請求の範囲」の記載を、当裁判所における審理の段階において訂正することのできないのは、同規則第十一条第二項に徴し明白である。

一方前記甲第四号証によれば、本件発明の図表器は、従来の各条板毎に別々の案内溝を構成し、これらの案内溝を単に重複累積する方式のものに比し、案内溝の全深を著しく縮少し得て、下層条板のグラフ目盛線に対する位置の精度を増し、従つて棒図条板の重複数を遙かに増加することが可能であり、在来品に比し、全般の構造を著しく簡単化し得る効果を挙げるものであることが認められる。

三、前記一に掲げた当事者間に争いのない事実及びその成立に争いのない甲第十号証によれば、審決が引用した昭和二十九年特許出願公告第五四七〇号公報は、昭和二十九年八月三十一日に公告されたものであつて、これには、「弾性条板6、7を二枚宛重複せしめ、重複棒図又は任意起点の棒図を表示し得る複式図表器において、各弾性条板6、7の案内溝4′、4″を経て裏面に屈折する部に、条板6、7列と直交するように、歯車で連結され互に反対方向に自在に廻転し得る二本の長ローラ22、23を器体3に枢着し、各上層条板6を外側長ローラー23の内面に接近して、又各下層条板を内側長ローラー22の外面に接近して通過せしめ、重複した各組の条板6、7毎に、一個の短ローラー21を以て、上層条板6を外側長ローラー23の内面に対し、又は下層条板7を内側長ローラー22の外面に対し、任意に圧着し得る如くにし、なお各条板6、7を屈折部付近において内外側より支えて、条板6、7の湾曲状態を規制し、各条板(6又は7)と、これに対向する長ローラー(22又は23)との間に僅少の隙を保つ如くし、任意の条板(6又は7)をこれに対向する短ローラー21を以て、長ローラー(22又は23)の表面に圧着したときのみ、長ローラー(22又は23)の運動を諸条板に伝え得るようにした複式図表器棒図条板起動装置」が記載され、特にその図面には、各案内溝4′、4″は図表器の下部のみにあり、かつ左右に喰い違つており、また各案内溝4′、4″の間に隔板を有し、各案内溝4′、4″に弾性条板6、7が一本ずつ挿入されていることが認められ、かつ効果に関して、「任意の条板6又は7を長ローラー(起動軸)に圧着したときのみに、該条板に長ローラー(起動軸)の運動を伝え、条板の額面出現部の長さを任意に調節しうること」が記載されている。

四、よつて右二及び三に認定したところにより、本件発明と引用例記載のものとを対比するに、両者は、「任意の弾性条板を、他条板に干渉することなく、任意に移動昇降する装置」を有する点において一致する。しかしながら前者は「単一の安内溝内に多数の弾性条板を、その間に隔壁を設けることなく、重複挿入した」のに対し、後者は、「図表器の下部において、隔板によつて隔てられている案内溝に、二枚の弾性条板を一枚ずつ挿入した。」点において顕著に相違し、両者間にこの相違があることは被告代理人もこれを認めるところである。

そして両者における右の相違は、前述の「任意の弾性条板を、他の条板に干渉することなく任意に移動、昇降する装置」と相まつて、

(イ)  先きに認定したように、従来のもの(引用例のものを含む)に比し、案内溝の全深を著るしく縮少することができ、下層条板のグラフ目盛線に対する位置の精度を増し、従つて棒図条板の重複数を増加することができるばかりでなく、

(ロ)  その構造自体から引用例では図表器の下部に設けた短い案内溝で、条板表示部の全長に亘つて、条板方向を指導するようになつているため、条板及び安内溝の各幅の精度が強く要求されるが(多数条板を重複した場合には、この要求は一層強い)、本件発明にあたつては、条板が案内溝からはみ出さない限り、これらの幅の精度は相当低下しても差支えないので、製造は著しく容易であり、

(ハ)  また引用例においては条板自体の直線精度も強く要求されるので、弾性条板の材料には、直線精度を乱さないような物質が必要とされるのに反し、本件発明のものは、条板自体の多少の変形は表示状態には、重大な影響がないから、その材料は前者に比してはるかに安価なもので足るものと解せられる。

五、被告代理人は、本件発明の要件中前述の(1)は、原告の本件特許出願前公知であり、すでに「各条板が互に干渉することのない条板送りの機構」が公知である以上、何人もその存在が不都合であることが判つていた隔壁を除いて、条板を単純にするということには、格別の発明力を要しないと主張する。

しかしながら被告が(1)の要件の公知なことの立証として提出したその成立に争いのない乙第一号証(昭和二十九年実用新案登録出願公告第一六、五三一号)に記載のものは、「一組二枚からなる条片5、6、7、8の多数組のものが、基盤2と前面版3との間の空間に挿入され、しかも相対向する各組の二枚の条片5、7と二枚の条片6、8との間に隔壁9を介在させたものであること」が認められるから、これを以つて本件発明における(1)の要件である「単一の案内溝に数条の弾性条片を重複挿入したもの」が公知であつたとすることはできない。

また被告のいう「各条板が互に干渉することのない条板送りの機構」は、その成立に争いのない甲第十二号証によれば、本件発明の発明者である原告が本件発明の特許出願と同日に出願したもので、しかもその後昭和三十二年七月二日に特許出願公告のなされているものであることを認め得るに徴すれば、原告の本件出願前公知であつたとは到底解されないのみならず、被告の主張するように、従来弾性条板を案内溝に挿入する場合、その案内溝の下部に条板を隔離する隔壁を設けていることに基ずく不都合が判つていたとしても、隔壁自体がそれ以外には何等の作用効果も営まず全然不必要、無意味な存在であつたとは考えられず、他面右新らしい機構も、これを他の発明の一部として実施するには、それ相応の難点及びその解決を強いられるのが一般であるから、右新機構の公知である以上、本件発明の完成には格別の発明力を要しないとの被告の主張は到底これを採用することができない。

更に被告は(1)の要件は(2)の要件の当然の効果と目されるべきものであると主張するが、先にも認定した「案内溝の全深を著しく縮少し、従つて棒図条板の重複数を増加することができる」本件発明の効果は、(1)の「単一の案内溝に数条の弾性条板を重複挿入したこと」の効果であつて、(2)の「任意の弾性条板を他の条板に干渉することなく、任意に移動昇降し得る装置」の直接の効果とは解されない。

六、以上述べるところにより、本件発明は、引用例と対比してその構成において顕著に相違し、その相違のため営む作用効果に格別の差異があり、しかも引用例に対する本件発明の構成上の相違点は、発明力を要しないでなし得るものとは到底認められないから、審決が本件発明は引用刊行物に容易に実施できる程度に記載されており旧特許法(大正十年法律第九十六号)第一条の発明を構成しないとしたのは違法であつて、取消を免れないものといわなければならない。

よつて訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のように判決した。

(裁判官 原増司 山下朝一 多田貞治)

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